業務品質向上・多能工化

操作手順をマニュアル化し、社員の多能工化を実現。部門全体の生産性向上に寄与(E社)

プロジェクト

業界製造業
規模従業員数110名
課題特定の製造装置に関して、教育の仕組みがなく、従業員によるスキルのばらつきや、稼働率のばらつきが発生していた
目的各製造装置を複数の社員が操作できるようにして、生産性を安定させること
支援内容製造装置の操作手順のマニュアルを作成し、製造部門の社員を多能工化していくための支援
効果マニュアルの作成・活用により、従業員のスキルが均一化され、生産性も向上した
結果を踏まえ、他部門でも同様の活動を実施

悩み・課題

E社では、「生産性の向上」において、以下の3つの問題があり、悩んでいました。

01. 多数ある製造装置の稼働率に差が生じて、生産ラインの生産性が安定しない

第1工程から仕掛品が送られてきても、「第2工程のマシニングセンター(自動装置)はAさんしか扱えないため、Aさんが他の製造機械を操作している間、マシニングセンターは使えなくなる。」ということがたびたび生じていました。このように一時的に生産が止まることで、生産ラインの生産性が安定しないという問題がありました。

02. 担当者が欠勤すると、この製造装置を稼働させられなくなる

第1工程が計画通りに完成して、指定の日に第2工程に持っていったとしても、第2工程の担当社員Aさんが欠勤していた場合に、その人しか扱えない機械が稼働させられなくなり、加工数量が目標に達しなくなるということがありました。

03. 代わりの人がいないので休めない

N社でも働き方改革を進めており、「ノー残業デー」を定めたり、有給休暇の消化を推奨したりしています。
しかし、一部の社員は、「私が休んでしまったら、機械1の稼働が一日止まってしまいます。そしたら、加工数量が目標未達になってしまいますよね。」と言って、有給休暇を取得しませんでした。彼のほかに、機械1を操作できる人がいなかったのです。

これらの話を整理すると、背景には『各種製造装置の取り扱いが特定のメンバーに固定してしまっていること』があると分かりました。そこで、問題解決のために『製造装置の操作方法を学習できる仕組みづくりをしよう』と提案したのです。

支援内容

E社の支援テーマは、『人材の多能工化』でした。
多能工化とは、ひとりの社員が複数の仕事を担えるような教育を施し、特定の人にしかできない業務をなくすことです。多能工化が実現できれば、仕事の停滞や手待ちがなくなり『生産性の向上』が期待できるほか、休暇をとりやすくなるので『働き方改革の実現』もできます。

具体的には、以下のように支援を進めました。

01. スキルマップの作成

スキルマップとは、チームメンバーが保有している技能を一覧にまとめた表です。
技能というと難しく捉えられてしまいますが、チームメンバーがおこなっている業務を一覧にするというイメージで作成しました。

① 部門業務の洗い出し

まずは、製造部門で扱う機械がどれだけあるか、作業者はどれぐらいいるかを調べました。以下の表では機械や作業者の名前は架空のものを載せていますが、整理してみると、製造部門には6つの機械があり、それを6名の人員で担当しているということが分かりました。

機械名作業者名
木村宮本田中吉田中村山川
機械1
機械2
機械3
機械4
機械5
機械6

② 業務遂行の可否の記入

次に、6名の作業者が扱える機械と扱えない機械を区分けしました。表を見ると、機械1を操作できるのは木村さんのみだということが分かります。全体的に見ても、木村さんに負荷が掛かっていることが分かります。

機械名作業者名
木村宮本田中吉田中村山川
機械1×××××
機械2×××
機械3××××
機械4××××
機械5××××
機械6××××

③ 業務遂行技能の評価基準

さらに、②で区分したものを、さらに細かく評価しました。技能の評価は、
他者を指導できる(S)、一人前にできる(A)、指導を受けながらならできる(B)、未習得(C)の4つに区分します。
こちらを見ることで、「機械1を扱えるメンバーが木村さんのみ」で、しかも、「木村さんは機械4と、機械5の指導を、宮本さんと田中さんにおこなっている」という実態が見えてきます。

機械名作業者名
木村宮本田中吉田中村山川
機械1ACCCCC
機械2SACBCC
機械3CCACBC
機械4SBCCCC
機械5SCBCCC
機械6CACACC

④ 個人別技能向上目標の設定

スキルマップを記入したことで、製造部門メンバーは自分たちが置かれている状況を客観的に認識することができました。「木村さんが出社できなくなったら、この製造部門は立ちいかなくなりますよね。」という意見や「もっと皆が扱える機械を増やしていかなければいけないね。」という意見が出ました。

そこで、以下のように個人別の技能向上目標を設定しました。
矢印(→)の先に示されているのが、技能向上目標となります。
この目標を達成すれば、木村さんの負担がかなり軽減され、機械作業の負荷バランスが取れるようになることは一目瞭然です。

機械名作業者名
木村宮本田中吉田中村山川
機械1A→SCC→BCCC
機械2SA→SCB→ACC
機械3CCAC→BBC
機械4SB→ACCCC
機械5SCB→ACCC
機械6CACACC→B

02. 業務マニュアルの整備

個人別に技能向上目標を立てたら、それに沿って教育をしていきます。そこで必要不可欠なのが業務マニュアルです。

まずは、製造部門で扱う6種類の機械ごとに、加工する製品の一覧表をつくりました。そして、使用頻度や1回あたりの作業時間、難易度を考慮しながら、作成するマニュアルを決めていきました。

作成は、動画マニュアル作成ツールのTeachme Bizをつかって進めました。Teachme Biz を使えば、マニュアルを「動画撮影」と撮影した動画への「操作手順の入力」の2ステップで、完成させることができます。
週に一度、各部門のプロジェクトメンバーで集まり、計画通りに作成できているかを確認しました。
はじめはなかなか計画通りに作成できませんでしたが、作成者の上司に相談をして、業務時間内で作成の工数を確保できるように配慮してもらったり、撮影や編集を他のメンバーにお願いしたりすることで、作成を進めていきました。

完成した動画マニュアルは、全社員に配信して、視聴してもらい、改善点を指摘してもらいました。「分かりやすい」「頑張って」というコメントをもらうことも多く、それがプロジェクトを進める上で大きな励みになりました。社員からもらった改善点をもとにマニュアルの修正を重ねたことで、動画マニュアルの品質もどんどん向上していきました。

03. ローテーションによる操作方法の習得

機械名作業者名
木村宮本田中吉田中村山川
機械1A→SCC→BCCC
機械2SA→SCB→ACC
機械3CCAC→BBC
機械4SB→ACCCC
機械5SCB→ACCC
機械6CACACC→B

はじめに完成したのは、機械1のマニュアルでした。機械1は、これまで木村さんしか扱えなかったものです。これを、田中さんも「指導を受けながらなら操作できる」という状態にするために、田中さんにマニュアルを確認してもらった上で、機械の操作をしてもらいました。

田中さんは、以前、機械5の操作を学んだときは、新しい機械の操作を習得することに不安があったそうです。しかし、今回は、事前に機械1の操作を動画マニュアルで事前に確認して、操作の仕方をイメージできた状態で現場に入ったことで、不安感はなかったと話してくれました。実際に操作してみて、分からない部分は木村さんに教えてもらいます。そして、操作後にもマニュアルを見直し、操作方法を復習したそうです。田中さんからは、「機械の操作は複雑で、一度教えてもらってもなかなか頭に入らないのですが、マニュアルがあると覚えるまで何度も復習できるので、習得しやすかったと感じました。」という感想をいただきました。まずは、木村さんに教えてもらいながらやってみる。そして、次は木村さんを頼ることなく自分でやってみる。こういう段階を踏んだことで、無理なく新しい機械の習得ができました。先輩の木村さんは、「今回、マニュアルがあったことで、自信を持って新しい機械の習得ができていたと思います。次は機械4を習得したいと話してくれて、心強いです。」と、嬉しそうでした。

同じように、機械2、機械3についてもローテーションを進めたことで、各製造装置の操作可能者の複数化を進めることができました。

結果・効果

これまで加工数量が目標に達しなかったり、期日通りに製品が納品できなかったりすることもありましたが、機械の稼働率が上がったことで生産ラインの生産性が向上して、目標数量を納期通りに製造できるようになりました。プロジェクトメンバーから「山川君が頼もしくなった。」という意見や「やっと木村さんにも気兼ねなく有給休暇を取ってもらえるようになった。」といった感想が出たときに、この多能工化プロジェクトを進めてきて良かったと心から思いました。

そのほか、営業部からは「納期遅れのクレームがゼロになったので、助かります。」という声や「製造納期の遵守率が高まったので、注文を受ける際に納品期日を明示できるようになり、営業もしやすくなりました。」という声をいただきました。また、会社としても、有休消化率が20%UPしたとの報告を受けています。

今では、製造部門の多能工化活動に触発され、組立部門と検査部門も、同様の活動を実施しています。検査部門では、マニュアルを整備したことで、他の部門のメンバーも業務の習得が可能となり、いざというときの作業応援も可能になりました。先日は、検査部門の業務量が過多になった際に、総務部門のメンバーが応援に駆け付けたことで、検査業務を納期通りに終わらせることができたそうです。

もう一つ、今後取り組んでいきたいのが、業務品質の向上です。操作手順をマニュアル化する作業を通じて、操作中に内在していた問題が顕在化しました。たとえば、「操作中に保護メガネの着用が徹底されていないこと」や「作業着の袖をまくって作業をしていること」など、これまで当たり前のようにやっていたことが、実は安全面で問題があるということが分かったのです。
今後はTeachme Bizで作成したマニュアルを活用して、業務の品質を上げられるように取り組んでいきます。

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